2013年07月17日

橋本紡さんの「夢の国に住めますか」に答えて

作家の橋本紡さん(現在は休筆を宣言しておられるそうですが)が、「今日(7月16日)の朝日新聞の夕刊に、寄稿しております」とtwitterで言っておられたので、近所の新聞屋に走って自動販売機で購入して読みました。
橋本さんがその後のtweetで意図的に挑発をしておられるので、それに乗ってみようと思います(^^ゞ

朝日新聞の夕刊への寄稿「夢の国に住めますか」は、同紙6月18日の朝刊社会面の「売れてるエンタメ小説 愛国心くすぐる」という記事に対して(私はこの記事は読んでいませんが)作家の立場からの考えを寄せられたものだとのこと。
寄稿の内容を荒っぽく要約すると、次のようになるかと思います。

・今の日本では単身世帯が最も多く、家族をテーマにした小説が売れるはずはない。
・大人の男女はおろか性についても語られない。性は成長の痛みであり、すべての痛みが排除されている。
・記事で人気とされる作品は結果として愛国になっているだけであり、愛する自分、摩擦なき場を守るために都合のいい世界を作った逃避である。
・今売れているライトノベルの、さらに売れ筋は「ハーレムもの」であり、完全な自己充足された世界、夢の国である。
・そのような作品を、十代のみならず三十代、四十代の大人が買っている。
・私たちは現実を直視する力を失ったのかもしれないが、次の問が残る。「夢の国に住めますか」

以下は、それを読んでのあくまでも読者としての私の感想です。

夢の国が現実世界を乗り越えるための一時休息する場だといいのだが、それが現実世界を侵食しているというような印象は強くなっているかもしれない。
それは例えば携帯ゲームに感じたりする。
暇つぶしに過ぎなかったのが「暇削り」とでも呼ぶようになってしまっており、日常の、面倒だが大切なことに時間やお金を使ったり割いたりする率が著しく下がってるように思う。
近年日本で著しく変化した環境の一つにネット端末と常時接続(スマホ等)があり、それらはネット世界への常駐は物理現実感の希薄化を促しているようにも思う。

しかし、夢の国に住んでいない人が、この世の中でただ一人でもいるのだろうか。
人は、現実をほんとうの意味で直視することなどできず、自我のフィルターを通した幻想を見ているのだから。
私たちはみな、ある意味で夢の国の住人なのだ。

夢は、受け入れがたい現実を乗り越えるために必要なものだとも思う。
直視できない現実に直面した時、夢を思い描くことで人はそれをやり過ごしたり乗り越えたりすることができたりもするだろう。
橋本さんは急ぎ過ぎたり、人に絶望したりしておられるのかもしれない。
私はむしろ人の心の光を見せたいし、橋本さんにもそのようなものを見せて欲しいと思ったりもする。

「源氏物語」は、ライトノベルというよりはむしろハーレクイン・ロマンスや昼ドロの走りのように思う。
千年経ってライトノベルが残ってるとしたら、歴史文学として読まれたりするかもしれない。


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遠州在住、伊勢志摩出身。アマチュアのバッハ・ヘンデル・讃美歌歌い。キリスト者(日本キリスト教団。2009年受洗)。学生時代の専攻は日本文学(近代)。卒論は三島由紀夫の作家論。
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